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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』25

Penulis: ひなの琴莉
last update Terakhir Diperbarui: 2025-01-21 16:04:30

赤坂side

気がつくと、俺はもう二十三歳になっていた。

大樹のことでCOLORの存続危機があったが、乗り越えてCOLORはまだ芸能界の第一線で活躍していた。

恋愛することもなく仕事を続けていたのだが、最近気になる人がいる。

今、目の前で俺の部屋を掃除している久実を見ながら、俺は別の人のことを考えていた。

俺と久実との付き合いも長くなって、本当の妹のように思っている。もう、呼び捨てがスタンダードだ。

ただのファンじゃなく心を許すことができる人になっていた。

たまに遊びに来ては「汚い部屋っ!」と言いながら掃除をしてくれるのだ。

舞は掃除なんかしてくれないけど、久実は片付けが上手い。

きっといい奥さんになるのではないかと思っている。

でも激しく動いて具合悪くならないか心配だった。だから無理しなくていいと言っているのに世話を焼いて体調がいい時はやってくれるのだ。

「……だから、赤坂さんっ。こういうのは隠してって言ってるじゃないですか!」

手に持っているのは大人向けの雑誌だ。

久実は顔を真っ赤にして俺を睨んでいる。そんな久実を睨み返す俺。

「あ? いちいち隠すなんてめんどーだし」

「変態っ」

「普通だろ。そろそろ慣れろって」

病状も安定していて最近は入院することも無くなった久実。

元気になってくれて俺は嬉しい。

にやりとする俺。久実は怪訝そうな顔をする。

「観てみるか?」

「結構です!」

ぷんぷん、怒っている久実を見て俺はケラケラ笑う。

久実と過ごす時間は癒しにあふれていて安心する。

芸能界での殺伐とした雰囲気とは違うオアシスのような存在だ。
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